スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
 
いたために話すのは雪炉の人たちしか居なかった。だから、人との接し方もわからなかった。せいぜい、本音を出せるのは母の様子を見に来てくれる女性カリムにだけであった。カリムはナディエや母のことを孫や子供のように可愛がっていた。ナディエが働いている間も時々、カリムは母の様子を見に行って世話をしているのである。だからこそ、ナディエは集中して雪炉で労働できるのであった。
「痛っ!」
雪炉の労働は過酷である。バケツでソルディモの街の端の貯雪庫から雪を運び、そして熱い炉の中に雪を入れ続ける。
ただそれだけの作業である。その代わり、火傷をするもの、逆に雪で凍傷するもの、怪我をする人が後を経たなかった。
「ナ
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