スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
を産んで黒く錆びた世界に降ろされた母は泣くことしかできなかった。子供は何かを悟ったのか、じっとソルディモの人間を見つめていた。
それから八年経った。
ナディエは何とか周りのソルディモの協力で育ったもののソルディモの人間を憎んでいた。母の病の具合は悪化するばかりで最初はあれだけ興味本位で集まっていたソルディモもしばらくしたら忘れるようになった。ソルディモはわずか四歳の時から雪を溶かす炉、雪炉で働くようになった。母の薬を買うために。かつて、母は言っていた。
「いつか上に帰ろうね。」
今は咳だけで呼吸が精一杯で話すことすら無くなった。
ナディエには友人というものが居なかった。ずっと働いていた
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