スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
いのですか?」
「当たり前だ。お前の病が伝染病だったら、汚れるだろう。近寄るな!」
数日前は優しかった兵士は今はまるで命をとる戝のように電籠に女と乳児を乗せる。乗せて、しばらくすると油の足りない機械音が鳴りだす。ゆっくりゆっくりと電籠は降ろされる。電籠の行く末を上の民は知らない。電籠は乗ったら人は死ぬ者だと思われていた。
母親と赤ん坊が震えて、泣きながら電籠にたどり着いた底はブリキで出来たような街だった。ガタンと音が鳴る。電籠は底に辿り着いたことを示していた。
「私は、生きている、の?」
呆然とする母と泣き続ける赤ん坊。
「んあ、また人だべな。」
電籠の周りにはボロ衣を纏った人が集
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