スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
 
て、無言で会釈をすると母の様子を眺めた。どんどん悪化していく母の病。ソルディモの医者に見せても「この病の原因はわからない。恐らくいつか死ぬだろうということ以外には何もわからない」ということだった。ナディエは毎日の賃金をカリムに渡しつつ、一部を母の薬代として貯金していた。そして、数年に一回薬を買う余裕が生まれた時に薬を買うのだ。ここまで母が長生きできたのは薬のおかげである。母の顔を見ると、いつも母の苦労を考えてしまう。上に捨てられた母。下でも放置された母。カリムが居なければあっという間に二人で餓死していただろう。時々、泣きそうになるがそれでも耐え続けることにした。いつか報われる日を信じて。
「いつ
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