スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
 
経った。
「もう今日はいいぞ、ナディエ。これが賃金だ。」
ナディエはごく僅かな賃金をもらうとお辞儀をして走り去っていく。ナディエにとって時間は一番大事な物であった。
「ただいま!」
家に帰ると咳をする母、そしてカリムが居た。
「あら、おかえり。早かったねぇ。」
「今日のお金です。」
カリムに賃金を渡す。
「あら、ありがとうね。」
「いえ、いつもこうやって僕が働けるのとカリムさんが母の様子を見に来てくれているからですから。」
「ナディエは偉いさねぇ。いつも働いて。それに今日、コートを羽織らなかったろう。風邪ひくよ。今からスープを作るからしばらく待っててなぁ。」
カリムに対して、
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