スノーディストピア 〜穢れた民の逝き道〜(短編小説)/月夜乃海花
 
うほとんど誰も来ないんだけどねぇ。」
カリムはそう言いながらもここには書物が落ちてくるということを話した。
「書物が落ちて、頭にでも当たったら死ぬから気をつけて選ぶんだよ。」
カリムが去った後、じっとナディエはその書物の廃棄場を書物を読みながら眺めていた。何十分、何時間か一回、新たな書物が落ちてくる。書物が落ちてくる。ただひたすら。
ナディエにとって、いつも融かしている雪よりもこの落ちてくる書物の方が雪のように見えた。とある書物には雪は氷の結晶であり、真っ白で美しいものだと書いてあったのだ。ナディエにとって、その本の雪を眺めるのが唯一の趣味であった。
炉に雪を融かし続けて、何時間か経っ
[次のページ]
戻る   Point(0)