リンゴを貰う/道草次郎
アマネージャーになっており、子供も既に二人産んだそうだ。
どこでどう分岐したというのか。ぼくは漠然と思った。ツチヤさんの人生とぼくの人生、そのどちらが幸せな人生と言えるか。バカバカしい考えではあるが、微塵もそうした考えが兆さなかったとはどうしても言えない。ぼくがこんな事を考えているなんてツチヤさんはきっと思いもしないだろうな、そう思うとなんだかすごく不当な目にあっているような気がして、少しだけ背中に汗をかく。
お返しといっては何だったが、家で獲れた甘柿を一包み差し上げた。非常な甘さの中に一抹の渋みを隠した柿である。父がえびす講というお祭りで、子どものぼくの為に買って植えたものだ。
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