リンゴを貰う/道草次郎
 


ぼくはツチヤさんのお父さんに言った。
「ツチヤさんにお伝えください。お父さんがこんな美味しそうなリンゴをたくさん作ってくれていて羨ましいな、ななしがそう言っていたと」

そうなのだ。たしかに美味いリンゴである。ぼくの胃袋は昔から複雑な感情とは別の次元にあるようで、そのことがぼくの人生の大部分を規定してきたと今となってはしみじみと思うのだが、まあそれはそれとして。曰く、「人を妬んでりんごを拒まず」。ぼくはそういう人間なのだろう。そんな事を考えながら、今宵は、りんごをムシャムシャと食べている。






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