燃える秋へ捧げるもの/道草次郎
ころには、つゆが満ちている。秋風にふれたつゆは冷たく張りつめ、くるしそうでもあり、だが陽をまとうとそれは、憩うてもいるようだった。
白い秋桜の花びらは数えて八枚だ。真ん中には意外な大ぶりの黄色い筒状花がすえられている。堂々としたそのたたずまいにたじろぐのは、むろん人間の方である。幾本かの秋桜は、ひょろりとしたその茎を斜交いにして風の成すがままに揺れていた。風が強ければ薙ぎ倒されんばかりに、弱ければ、優しくうなずくように。
柘植の常緑は晩秋にあってもその濃さを失わない。赤い実ばかりを各所にちりばめ、じっと黙っている。家人が退けば何処からか小鳥が舞い来て、きっとその実を啄むに違いない。
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