燃える秋へ捧げるもの/道草次郎
 
は、自分が一番よく知っている。言葉は、縋れるものではあるが、縋るべきものではきっとない。
 
 自生の花。秋の野には、まだたくさんの花が咲いている。それをこそ見よう。見るだけは、見られるのだ。

 構わないだろうか、それを恩寵と言って。庭へ征く。


 どうして、宿根バーベナがひじょうに低く可憐に風に揺れるさまを、ぬれた白い鉢植えがコンクリートの上で夕陽に照らされ美しく輝くさまを書かずにいられよう。
 そして、控えめな八重咲きの秋薔薇のことも。それは濃い桃色をしていて、棘を隠し持つ葉には珠のような水滴が幾つもくっついている、まるで幼子の涙のように。

 よく観れば庭の至るところ
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