離島/地下鉄を歩く/カワグチタケシ
暮らしを支えている。島民は老いた漁師たち、測候所の職員とその家族、なにによって生計を立てているのかわからない男がひとり。
港に立つ。水平線の彼方まで、海以外はなにも見えない。隣の本島までは、約百五十キロメートル。週に一度、船が港に着き、郵便、新聞、食料を降ろす。積荷のなかで、重要なもののひとつが電源だ。発電施設のない島にバッテリーが運ばれてくる。
地上波が届かないため、船の着く日以外は、通信衛星が島と外界をつなぐ唯一のルートだ。年間平均気温摂氏二十度。朝と夕方には、乾いた強い風が石垣塀のあいだを通りぬける。野良猫はいるが、犬は一匹もいない。
たまたま海底から姿を現した突起物
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)