11月1日所感(つれづれ)/道草次郎
 
葉樹の悉くが好ましく感じられる。灰色の霧が山の突端を隠している。犀川はグリーンの水をたたえて静かに流れている。まだ釣り人の姿は何処にもない。

みな文章の主題となりそうだ。はやく筆を取りたい気分になり少しそわそわする。

一枚のもみじ葉を例えばボタニカルアートのような微細精巧に言語を駆使し造形を試みたい意欲が湧いてくる。葉裏を這う虫の脚の一本一本や、葉の来歴を示す小さな傷とその傷を縁取る茶色い縁、陽の運行に伴う色彩の微妙な変化についてなるべく詳しく記したいと思う。

こういう心の瞬間は非常に類まれに違いないから、心の移り変わりを仔細に眺めていたい。

また、人という人をその善意にお
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