振り返ること?/道草次郎
 
、後で先輩ヘルパーに聞いたら、どうやらあれは負債に過ぎないらしく、処分するにも金がかかるから玄関にああして置いておくより他にないという事なのだった。その人はいつも、どうしてもあじフライが食べたいと言った。提供できるサービス時間の都合上、最寄りのスーパーへしか行くことができず、しかもそのスーパーにはさんまのフライしか置いていなかった。だからいつも、「すみません、今日もさんましかありませんでした」と言わなければならなかった。その人はそんな分かり切ったぼくの報告を、少しだけ哀しそうな顔をしていつも聞いていた。


1月2日だったと思う。どうしてもと頼まれ訪問した時、もうどうにも悪い状態となったその
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