振り返ること?/道草次郎
思った。そして自分のあまりの世間知らず、他人との距離の取り方の稚拙さにはげしく恥じ入る事となった。当時付き合っていた女性にその事を話すと、それは寧ろ当たり前な事で、あなたは今までそのような自分に自覚的でなかったのかと逆に尋ねられた。
早稲田の彼は自分が早稲田出身であることを「余り」知られたくはなかったのだ。自助グループに参加しておきながら、そうした思考を取りうる人間の複雑さ(と当時は思った)に半ば呆れ半ば怒りが込み上げてきた。しかし、それは彼にとっても同じことで、彼にも、ぼくに対する呆れと怒りがきっとあった事だろう。
彼を愚かだと言うことはできなかった。寧ろ彼が「普通」の感覚の持ち主で
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