麦の声/道草次郎
故郷=ふるさと}も星の刻も今のあなたにはない。ない。ないのだ。あなたはそれを知っていて、ないままに律動をする。なぜそうなるかの謎と共に。
あなたの星になれぬ刻の核をなすのはしかし、星の刻だ。そして星の刻のなかにこそ、あなたの星になれぬ刻は律動する。いきさつは重要か、それは分からない。ただ有ることと、有ることの来歴のあいだに何が横たわり、また、これから有ろうとすることと、有ることのあいだに拡がる洋(うみ)の海図を、把握することが出来るかは分からない。
しかし、あなたがおそらくそうであるように、内包しつつ、茶碗を洗いたいものだ。そして洗いながらに内包を忘れ、洗うこととなり、果ては
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