9月11日の付箋/道草次郎
 
転がっていることをつい見失いがちだ。意気消沈して帰っている途中、車窓から空き地に疎らに生えるセイタカアワダチソウが見えた。
 給食センターが隣接しているその空き地には、何台かの軽トラックとショベルカーが停められていた。ぼくはその空き地をぼんやり眺めていた。他にみるものも無かったし、空き地の向こうのパチンコ屋の派手な看板を見るよりはずっとマシだったからだ。
 セイタカアワダチソウはくすんだ汚い黄花を咲かせていた。南風に揺れていた。その風に吹かれて一匹の美しい蝶が舞っていた。蝶は空き地の入り口の方からやってきて、はじめは国道を走るトラックや乗用車の風圧に弄ばれていたのだが、やっとのことで空き地の真
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