未日記/道草次郎
くともぼくがかかっていたあの医者はいつも草臥れているように見えたし、ひっきりなしにやってくる患者に向かって毎度毎度同じことを繰り返すだけの、滑稽を絵に書いたような人だった。
かつてかなり高額の料金を払ってカウンセリングをしたこともあるのだが、けっきょくその感想は近所のおじさんの方が余っ程含蓄のあることを言いそうだな、それだけだった。カウンセラーに言ってやりたかった。それであなたは誰にカウンセリングをしてもらってるんですか?と。誰もみんなおかしくない人などいなかったし、事実そうだった。寛解期にある人が急性期にある人の話に耳を傾けてふむふむと顎に手をやること、それをカウンセリングと呼ぶのだと
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