M君/道草次郎
のはたぶんこういう時に使う言葉である。
もっとも、ぼくもぼくでおかしな人間なので、それからも彼とは時々ドライブなどをして共に時間を過ごした。相変わらず幼稚園の頃の自分がされた嫌だったことのリストを携えて彼は生きていた。ある時はなんの前触れもなくトンネル走行中にパワーウインドウを開け絶叫してみたり、雲行きが怪しくなってきた山の入口で、軽装のまま登山をしようと言い出したりした。
ぼくはいつも車の助手席でハラハラしていたが、彼の陰惨な思い出話にはじつによく耳を傾けた。そんなおかしな関係が、あたかも、ぼく自身の鬱屈した学生生活への復讐でもあるかのように続き、やがて日々は流れていった。
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