ミルキーウェイ〜宮沢賢治と夜に捧げる/道草次郎
してきていた。
手にしていた懐中電灯の明かりをさっきまで二人がいた薮の方に向ける。
そこには細かな木屑と幾片かの材木が無造作に転がってるだけだった。
ぼくは意識的に川辺の茂みの暗がりを見つめた。
目が闇に馴れるまでずっとずっと。
そのあいだ心に立ち現れてくるものは何も無く、ただ静かな真夜中の風が耳の脇を流れるのを感じただけだった。
やがて目と闇とが統一して意識そのものの姿が眼前の暗闇に具象化するのではないかと思えたその時、ふいに天を仰いだ。
ぼくは息を飲み、思わず震えた。
ミルキーウェイと呼ばれる我々の銀河がそこには在った。
じつにありありと、息づくように輝きながら。
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