ミルキーウェイ〜宮沢賢治と夜に捧げる/道草次郎
ら。
それは本当に乳を流したかのようであった。
紫がかった暗幕の上に横たわる美しい宝石のようにそれは存在していた。
ぼくは鼻から息を吸った。
吸い込まれた空気には、酸素と多くの窒素、それから少しの二酸化炭素などが含まれているのだろうが、その時はたしかに感じられた。成分として含まれるもののうちの一つとして、銀河もまたそこに含まれるだろうことを。そして、この瞬間に於いては、地上のあらゆる罪や煩いなどというものは、化石層の下に埋もれる陰影に過ぎないのだということを。
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