ミルキーウェイ〜宮沢賢治と夜に捧げる/道草次郎
 

ホタルを近くで見たい衝動に駆られ半ば無意識に川の前の歩道に踏み出したその時、うっかり小石を蹴ってしまった。

その音が二つの影の動きを、一瞬、凍りつかせた。

その一瞬がぼくには永遠のように感じられた。
また、その永遠がずっと続いてこの夜を永遠の中に閉じ込めてくれはしまいかとも切望した。
しかし勿論それは長くは続かなかった。

「は、はやくせい、いぐぞ。おい、いくぞって」

そう言うと、二つの影はそそくさと手にしていた何かを懐にしまい、近くに乗り付けてあった軽トラで何処かへ行ってしまった。

ぼくはしばらく茫然としていた。
川辺にはすでに三匹ほどのゲンジボタルが屯して
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