ミルキーウェイ〜宮沢賢治と夜に捧げる/道草次郎
二つ、チラチラと交差しているのが見えた。
その光を見た瞬間からぼくの胸はバクバクと鼓動し始め、理性ではコントロールの利かなくなった何ものかが身内を駆け巡るのを感じた。
いつの間にか無意識のうちに足音を立てないようゆっくりと歩を進めていた。
「おい。はやくせい。そんなもん後でいんだ」
だいぶ歳を取った男の声が聴こえた。
ぼくは物陰に身を潜めてしばし耳を傾けてみることにした。
「わかてる、わかてる。荷台、つめるか?」
今度は老婆の声だった。
嗄れていて男の声と聞き間違えそうになったが、よく聴けばそれは紛れもない年配女性の声だった。
二人はどうも争っているという
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