エリオット「伝統と個人の才能」/藤原 実
 
                    ……(中略)……
私は、詩とは力強い情感がおのずから溢れ出たものだと言った。詩は静かな気持ちでいるときに思い起こされた情緒に発する。その情緒に心を集中しているうちに、一種の反動で静かな気持ちはだんだんに消えていき、前に熟考の対象であった情緒に似た情緒が次第に生じてきて、実際に心のなかに存在するようになる」
    (ワーズワス「抒情歌謡集(第二版)序文」宮下忠二訳/「世界の詩論」(青土社))


エリオットが引用した部分の前後を読むとワーズワスは情緒をただ溢れ出るままにまかせていたわけではなく、それが詩として結実するまでにいくつかの段階を考えてい
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(7)