夜に捧げる何か/道草次郎
のは仕事に対する意識の低さの表れであり、もっといえば甘えのようなものに過ぎないとそういうことであった。
妻はその年下の上司による粘着質ともいえる説諭にほとほと嫌気がさしたのか、ちょうどその時夕飯の支度に取り掛かろうとしていたぼくに無理やり電話を押し付けてしまった。
もう、勘弁して!後はお願い、という風に。
ぼくが電話に出ると、相手はいきなり男の声が耳に飛び込んできたショックで、二、三秒のあいだ沈黙していた。
そして、いくらか裏返った声でいつもお世話になっております、と言った。
もちろん、これにはぼくの方からも丁重な挨拶を返したのだが、妻が先程から30分ほど我慢して聞いてきた話をも
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