混沌ー予備校のことなど/道草次郎
いたりした。
また、後方の窓際の席には、イベントコンパニオンのバイトをたまにやっては小金を稼ぐ、ボブヘアーの美女が座っている事が多かった。彼女は自分の美貌を十分に自覚しており、それゆえに、いつも気だるそうにしていることを自らに課しているようだった。一種独特の雰囲気を持ちながら、不思議と彼女の周りにはいつも男がいた。むろん美人であったから当然ではあるのだが。しかし彼女は、同性である女のことを心底憎んでいるようだった。
ぼくはと言えば、ほとんど誰とも話をしないでアイザック・アシモフの『 ファウンデーションと帝国』などの古いSF小説を読むふりをしていた。1人だけオカザキ君という背の低い病んだ
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