混沌ー予備校のことなど/道草次郎
 
んだイノシシみたいな話し相手がいたけれど、彼は彼でいつの間にか気の合う友人を他に見つけ、ぼくの元から離れてしまった。

その時のぼくが何に悩んでいたかは今となってはよく思い出せないのだが、17歳で大学入学資格を得たそのすぐ後、進路面談において前後と何の脈絡もなく、「自分がいかに矮小な人間であるかそれを知りたいだけです」と言い放ち世界史の講師を閉口させた事を覚えている。

そう言えば世界史の講師は四十絡みのアラブ人みたいな顔の男で、顔に似合わない頼りなさげな優しい声の持ち主だった。オスマントルコの領土拡大に伴う近隣諸国への影響と十字軍遠征の愚行の間に、自分が高校時代に組んでいたバンドの話を挟
[次のページ]
戻る   Point(4)