混沌ー予備校のことなど/道草次郎
退したか休学を余儀なくされている若者たちだった。
休憩室には安っぽい長机が三列しつらえてあるだけで、お世辞にも落ち着いて休める場所とは言えなかった。冷房の温度は決まって高めに設定されおり、そこでじっとしてると却って疲れてしまうくらいだった。
入口近くの席にはいつも決まっておそろしく太った皮肉屋の男が居た。そして、たいてい気の毒な話し相手をつかまえては何かの悪態を付いていることが常だった。古文を教えていた若い女性講師がそれまでは彼氏いないの一点張りだったにもかかわらず、突如として入籍を発表した事に対してニヤニヤと引き攣った笑いを浮かべ、「女狐め」と言い捨てたのをぼくは何の感情もなく聞いた
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