混沌ー予備校のことなど/道草次郎
。
BOOK・OFFと蔦屋の大きい看板が見え、そのまた先には小さなカラオケボックスの看板。やたらと看板の多いこの地方都市には、高層ビルというものが見当たらない。
半年前に廃業した商店は手付かずのまま放置され、蔦が絡まる廃墟と化していた。その壁面を素早く這いまわるシルエット。あれは、おそらくヤモリの影。若い頃のぼくは視力が良かったのだ。
東京?別に行きたくないよ。人が多くて疲れるし。親や知り合いにはそう言っていたけれど、本音を言えば、大都会のあの圧倒的なリアル感が恐かったのだ。
その予備校には様々な事情をかかえた色々な人が集まって来ていたけれど、その多くは高校を中退し
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)