混沌ー予備校のことなど/道草次郎
 
かが誰かに若者らしい何事かをつぶやく度にぼくの背筋はピリピリと反応し、もちろん女の子とは目も合わせられなかった。獣医になる夢を持つ革ジャンを着た金髪の男が物理の講師から妙に親しくされ、居残りで積分をマンツーマンで教えてもらっている姿を見ると、なんだか自分は本当に取り残されたみたいだった。


やがて、進学にともないその予備校に行くことを止めてからも、自分がそこで何を学び、どんな人とどういった話をしたのかが未だにはっきりしない。部分部分は記憶に残っているのだが、それを集めてきて1つの統合したイメージを形作ることが上手くできないのだ。

ぼくに限らず、もしかしたらこの10代後半の時期は、世界
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