混沌ー予備校のことなど/道草次郎
クールから新しい講師がやって来るということも割と頻繁にある事だった。その時の代表はたまたま関西からやってきた人で、度が過ぎる明るさを周囲に振りまいているような男だった。ぼくも下の名前にちゃんを付けられて何度も呼ばれたけれど、いつもどこか腑に落ちない気分だった。日焼けしたタヌキみたいな奴だなと内心思っていた。
ぼくの予備校時代は青年らしい鬱屈はあったものの、10代の瑞々しい青春や恋愛のいざこざ、友情などからはまったくと言っていいほど縁遠いものだった。むしろ周囲をぼんやりと眺めては、自分よりも一歩も二歩も先を歩いている同年代の一挙手一投足に、敏感過ぎるぐらい敏感だった気がする。
誰かが
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