ワタナベさん/道草次郎
いたい50代前半という感じで、言葉の端々からは、どうやらだいぶ歳をとったお母さんを介護している様子だった。
とても柔和で若い人にはとりわけ優しい、という印象をぼくはその人に持っていた。ワタナベさんが参加しているあるボランティアグループにまだ19歳の男の子がいた。その子は後に知ったところによると、てんかんの発作を抑えるためにかなり多くの種類の薬を常に持参していたらしい。信じられないほど利発でジャズに造詣が深く、いつも英語を勉強していた。サンタクロースのトナカイ役を買ってでたのもこの子だった。ちなみにぼくはサンタBである。
彼はワタナベさんと一緒に、ボランティアセンターが発行するボランテ
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