ワタナベさん/道草次郎
と、そこで知り合った同年代の人たちの近況や、本が好きなこと、育てた事のない野菜がメロンとスイカだけだということ、母が胃がんになったこと、自分も同じ病気になるかもしれないことなどを取り留めなく喋ったように思う。
19歳の子は黙ってぼくの話に耳を傾けていた。ワタナベさんも同じく黙って聞いていたけれど、相槌をうちながら時々お茶を口に運んでいた。
キケロが『老年について』でこんなことを言ってたけれど、とぼくが上目遣いにいくつか言葉を引用した時、19歳の子は何かすごく頭にきたという感じでななしさんはコーディネーターのサカイさんをご存知ですか?と不意を衝く質問をしてきた事がある。そんな時もワタナベ
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