冒険/タオル
車が一台、ビル側に傾いて停まっていた。そこにさんさんと低い角度から降り注ぐ陽の光、思ったより夕方に近い、雨上がりとかではなかった、理由はたぶん暑いからだれか撒いた、それだけだ。
ふたりは黙って真剣にあるいた。これが散歩であることを忘れるくらい一心に。
これが、どんなことになるのかわからない、
どんな道につながるのかもわからない、
散歩を超えた、求道的ですらある何か。
もし似ているものがあるとすれば、『お遍路』なんだろうか。
やがてわたしたちのまえに坂が現れ、わたしたちはまた黙って淡々と進んでゆき、ほどなく頂上にたどり着いた。大きな橋が視界の果てにある森に向かって伸ばされていた。橋の
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