冒険/タオル
そのひとは昭和でしかお目にかかったことがない、キャタピラー風のベルトの腕時計を自分の左手首に巻きつけているにも関わらず、事務机の上には小ぶりのノートパソコンがあって、画面には自分の百貨店の中らしい、婦人服やバッグ、かごに詰められた明るいオレンジ色のパン、人々がぽつぽつ乗っているエスカレーターなどの画像が簡素な紹介文とともに映しだされていた。
かってに『自分の店』と思いこんでいるだけの可能性が高いが、
わたしはまるで疑ってなどいないかのように、『そうですかー』と素直なまっすぐな声で返事をした。
そして急にわかった。
わかりすぎて、目ざめそうになった。
このひととは初対面だ。
それも「
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)