黄金挽肉炒飯殺人事件/墨晶
 
、窓から月明かりが差す六畳間ほどの部屋に、色の濃い水泳ゴーグルを装着した老人が布団に横臥している。
 窓の外に降る雨が光っている。
 男は老人の枕元に駆け寄り、跪く。


「父さん!」
「おい、部屋に入るときはノックくらいしろ」
「フスマだよ」
「そして、もっと痩せろ」
「えっ・・そんなことより、教えてくれよ」
「ふん」
「高校途中で辞めて悪かったよ、万引きだって、下着の窃盗だって、中学生を恐喝するのだってもう反省して一切やってない、本当だ! オレは馬鹿なりに今頑張ってるつもりなんだ」
「お前はどうして前置きが長いのだ?」
「父さん! 『エムエスジー』って何だよ?」

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