黄金挽肉炒飯殺人事件/墨晶
 
ましょう」
「よせ。それに、俺にはなにもここのチャーハンに関して不満はない」
「あーあーわかりました・・おーい、ちょっと!」

 新人は立ち上がると灯りのない厨房の奥に向って叫ぶ。
 汚点だらけのコック服が張り裂けそうな肉体を揺らし、焦点定まらぬ目の店主はのっそりと無言で現れる。先程、湯気立つ皿を運んできたときは気が付かなかった。この豚のような男、眼鏡をかけ、無精髭を剃れば、この先輩とほぼ同じ顔じゃないか? どう云うことだ? まあ良い・・

「あのねえ! ちょっとこのチャ・・」

─ 右目に一瞬熱さを感じ、黒い液体のようなものが目の前に飛び散り、店主のコック服に新たな汚点をつけ
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