黄金挽肉炒飯殺人事件/墨晶
 
「おい新人、中国ってのは広いだろ、それぞれの地域でチャーハンだって味が違うんだ。君が知っているチャーハンだけがチャーハンではない」
「なにをおかしなこと云ってるんですか。チャーハンはチャーハンですよ、先輩」
「こう考えるんだ、今、君は腹を立てているのではなく、人生初の経験に驚いているんだ。君が持っていたチャーハンの概念をくつがえされ、戸惑っているんだ、と」

 新人は、「この先輩は一匹狼タイプと云うより、単にズレているだけなんだ」と推測した。変人と呼ばれる者の典型的な自己愛のひとつがこの「ズレている自分」と云う属性への強烈な意識だ。とすれば この先輩とはこの先、話は交差することはないだろう
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