黄金挽肉炒飯殺人事件/墨晶
「どうして」
「だって、普段僕も冷凍のチャーハン喰いますけど、アレと全然味ちがいますもん」
「おい新人、黙って喰え」
「ウチの母も、残りご飯でよくチャーハン作ってくれましたけどね、はっきり云って、もうちょっとマシでしたね」
先輩は、レンゲでチャーハンを三度口に運ぶと傍らのスープを一口飲む。頬、顎の下のたるみ、耳の付け根が一体化した広く横顔を占有する肉が咀嚼に合わせ規則正しく震えている。そして眼鏡の横から見える目は相変わらず無常を凝視する静止した一刹那それ自体のようである。
「なにか変な香りがすると思いませんか? きっといい加減に作ってスパイスを間違えたんですよ、きっと」
「お
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