ある疑問/まーつん
 
答えた。
「もし自分の中の恐れに立ち向かうなら、そしてそれを乗り越えられたら、君は相手と和解できる。だが、自分の中の恐れに屈服するなら、君は相手を傷つけることで、復讐を遂げるだろう」 

 娘は立ち止まった。そして怒りを孕んだ眼で僕を見上げた。
「自分を傷つけた相手と仲良くなんかなりたくない」
僕は静かに答えた。
「だけど、自分を傷つけた相手の本当の姿が、君には見えているだろうか ? 」
「見えているよ。ただのいやな奴だよ」
「なら、その人はなぜ君に嫌なことをしたのだろう?」
「そんなこと、知らないよ。あたしのことが嫌いなんでしょ」
 娘の声はそう叫んでいた。どこかで鶯が鳴
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