とおい記憶/草野大悟2
 
 ここにくるようになって、もう何年がすぎただろう。何年? いいや、何万年、何億年という時がたっているのかもしれない。ふかい眠りからさめたときには、すでにここにいた。それはたしかだ、とおもうし、だれもがそう口をそろえる。そういえば、このあたりの景色をずっといぜんにみたような気もする。
 移り変わる季節ごとの風景もしっている…たぶん。

 ………春は…、そうだ。あたり一面に広がる田んぼに水が張られ、稲が植えられる。田植えだ。田植機が忙しく田んぼを往復して、ぽやぽやとした苗を植え付けていく。
 いい天気でよかったですね。ああ、ほんとうに。といった会話や、その時の風の匂いさえおもいだすことができる
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