生きていればこそ/メープルコート
 
た。

 体中から管が出ていた。
 私の妻が私の手を握っていた。
 穏やかな温もりを感じた。
 点滴が血管からずれていたようで私の右腕はパンパンに腫れ上がっていた。

 左手から点滴を打つといって未熟な看護士が左手に何回も針を刺した。
 私は舌がもつれて何も喋れなかった。
 時間の感覚が全くなかった。
 時計は八時を指していたが朝なのか夜なのか、私は誰かを待っていた。

 やがて両親と妻子の顔が現れた。
 夢は見なかった。
 尿道が痛くて仕方なかった。
 精神科医が面談をすると言われた。

 やがて許可が下りたらしく私の体から全てのチューブが外された。
 そのう
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