なんとか生きている/帆場蔵人
 

掛け違えていないのかもしれない

僕は亡霊に問いかける

生まれつきボタンが掛け違って
しまっていたなら、間違いは
最初から起きていてそれは

もう、手遅れじゃないか
祖母に、父に、母に、兄の
亡霊に、言葉に問いかけ

朝霧のなかをさまよい
夜の波音を追いかけて
川を遡行していくのだ

ボタンを掛け違えちゃいけませんよ

言葉が壁に、高いダムになり、阻まれる
堰き止められた源流は今や飽和して
嵐を待っている、決壊せよ! 決壊せよ!

避難勧告のアラームが唐突に鳴る

亡霊を吐き出し、言葉を意味を降らせよ
亡霊を轢き潰し、言葉を意味を破壊せよ
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