珈琲の香り / 喫茶店の地下1Fは不思議な洞窟のようで/beebee
 
は階段を降りて行くと薄暗い洞口に入るよう
だと思った。自分は地下帝国の住人となって、早朝の冷たく霞が架
かった謎の大陸に降りて行く。そこは色々な生き物が棲息する謎の
大陸で、青白い光りは底に溜まっている。結露しそうな気配に夏で
も襟をかき合わせるだろう。席に着き目を閉じ大きく息を吸う。苦
く熱い珈琲の強い酸味が舌を噛む。遠くから甘い香りが流れて来て、
隣りのソファには白い顔が咲いていた。それは白磁のような肌をし
た若い女性で、空気を焦点として凝固させる。ヒラヒラした白い二
本の指の間に、煌々と灯りを点す雌蕊(スマホ)があって、目深に
被った帽子と潤って光る瞳。ああ、テーブルは冷た
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