珈琲の香り / 喫茶店の地下1Fは不思議な洞窟のようで/beebee
 
冷たく硬い大理石の
手触りだ。かさついた皮がこころと身体を覆う。蝋細工の塑像のよ
うに、ぼくはビニルクッションに固定される。物憂い早朝の意識は
半分妄想に眠っている。
 と、ピィッ、ピィッ、ピィッと携帯の8時のアラームが鳴って意
識を戻す。出勤の時間だ。一気に気分は現実に引き戻されて、カッ
プを片付け階段を上って行く。青空のサバンナへ狩に出て行くかと、
顔を上げて外へ出る。仕事の時間だ。
 そうそう、この珈琲の香りだ。これが鍵なのだ。

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