Universal Boardwalk/カワグチタケシ
一月
冷たい雨の降る一日を
低い建築の中で過ごした
雨滴が連れてくる天上の冷気が
ガラスを透して膝に爪先に染み込む
キッチンシンクに置かれるときに
グラスが立てる甲高い音
注意深く人生を見つめれば
死んでいく人がいるのがわかる
一番冷たく短い日に、谷底の村で
脚を交差させたまま眠る
美しい人を見た
新月の大潮 海水は運河に流れ込み
小型船の曳航が起こした波が
早朝のボードウォークを濡らす
二月
我々は物質世界に生きる物質的存在
物質は存在し、空想を補強する
時報の鳴らない街を 傘をささずに
肩先に積もる雪の重量を感じながら
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