Universal Boardwalk/カワグチタケシ
午後五時半の暗転する部屋で
床板と足の裏のあいだには
常に不安定に変化しつづける
ある一定の温度が存在する
通りに出て、いつもの猫に会う
セロファンを震わせる乾いた風の音
夜を賭けてか夜明けに向かってか
足音にばかり気をとられ
夜の水たまりを踏まないように
光に向って進む
三月
癒しという言葉は
傷を持つ人間には麻薬のようなものだ
その周辺から抜け出せなくなる
それに関わってしか生きられなくなる
橋の上から見下ろすと
運河の水面に霧が流れていた
霧の途切れたところに
道のようなものが見えた
翌朝、霧が晴れた
地下鉄に乗って運
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