Universal Boardwalk/カワグチタケシ
 
火の匂いのするほうへ 夜は視線を上げて
声は聞えるが 言葉が届かない
夜になると叶わない気がする夢があるから

ターミナル駅で吐き出される
ラッシュアワーの乗客のように
僕たちはここに集まることができない

「急に走り出したから何かと思った」
特に答えもないまま
内湾も人工海浜も五時には暗くなる


十一月

雨が降り 雨が止み
ガラスドームの外は夜
大きくて重たい物が地面に落ちる音
倍音を含んだ重低音がドームに反響する

そして叫び声とサイレンが追いかける
世界のどこかで誰かの血が流れるように
あたたかいバルコニーで
イルミネーションは瞬きつづける
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