うす布/田中修子
 
金の明かりに照らされた
夜桜のトンネルのした を

屋台の光が金色だ。林檎飴をひからせている。

夜叉か、この、爪、爪を磨いて、
夜桜の香にあてられる、
この手が銀の羽になろうとしている、羽ばたきの、音、が
いやだ、まだここにおる、おる、

林檎飴、かじる。
澄んだ飴のくだける音、そのさきのまあるい果実、
したたる林檎のその汁はイブの香り、
湯気を立たせるわたしの、赤い着物。
血の赤をしている。みだらに切ったばかりの血の赤を、
リンゴの香りはイブの香り、イブは夜叉、そしてわたし。

金朱! 銀橙! の、花びらが散るよぅ、
魔女は火刑に、

(花弁その、
 
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