私の国/帆場蔵人
ここは私の国ではないから
わたしの言葉は通じません
何を言われているのか言っているのか
水の中で互いにぶくぶくしながら
ただただ息苦しくてしがみついてたから
爪は剥がれ肉も削げて皮膚のしたには
鱗がきらきら、いつの間にやら鰓呼吸
澱んだ海に棲むものになってしまいました
海面へ遠ざかっていくあなたは
とても正しい発音で話している
でもそこも私の国ではありません
さよなら、に
白紙の手紙だけ残して
さらに深く深くどこまで
いけばいいのでしょうか
あなたの言葉を創造して
あなたもわたしの言葉を
創造して背中合わせで
生活のふりをしていた
こしあんだと
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