副葬のためのノート/春日線香
 
脳を露出させた人々が忙しそうに立ち働いている。生コンを注がれた一輪の猫車を操りながら、片方の手で頭をおさえて脳がこぼれないようにしている。危なっかしいのに不思議と整然として、夜遅くまで作業は終わらなかった。



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老人が壁を舐めるのに必死だ。青白い舌をひらひらさせて土塀を舐め取ろうとしている。耳のうしろに大きな腫瘍がぶら下がっていて、頭を動かすごとにそれも一緒に揺れる。不憫に思って飲み物を用意したが一向に手を付けようとしない。壁はとても甘いのだという。



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ベランダに誰かいるらしい。磨りガラス
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